【業界別戦略PR】製造小売業の戦略広報・PRのススメ

2024.4.01

コラム

当社では様々な企業様への戦略広報支援を行っています。
そこから見えてきた業界別の戦略広報のススメをお送りします。
今回は『製造小売業』の事業者様が戦略広報を取り組む際のコツや注意点などをお届けします。

製造小売業界について

製造小売業とは?

企画から製造、販売までを垂直統合させることで無駄なサプライチェーンを省き、消費者ニーズに迅速に対応できるビジネスモデルを展開する業界のことです。要はメーカー直販型のビジネスです。
SPAという言葉をよく目にしますが、これは製造小売業のことを指します。
ファッション業界ではSPAは当たり前によく聞く言葉で、ユニクロやZARAなどはその代表格です。
ファッション業界以外ではD2Cという言葉がよく利用されます。これも製造小売りを意味し、メーカー直販型ビジネスのことを指します。

出所:製造小売業(SPA)のビジネスモデルイメージ図

店舗販売を主→SPA、ネット販売を主→D2C、とその違いを表現するケースが多いですが、本記事ではその2つをまとめて製造小売業界とし記載を続けます。

製造小売業界の動向

現代は「モノが売れない時代」と称されることがよくあり、小売全体的に厳しい状況が続いています。しかし、実際にはモノが売れないというよりも簡単にモノが売れなくなっていると考えるべきでしょう。その要因はいくつか考えられます。

1.商品・ブランドのコモディティ化
「品質の高い商品」「オシャレな商品」「機能性」「価格の安さ」など商品・ブランドの特徴・付加価値としている要素はことごとく真似されすぐに競合も追いついてきます。日本の技術開発力の賜物だと私は感じていますが、一方で消費者が商品を選択する理由を奪っている状況でもあります。
機能、見た目、価格、品質、どれもがほとんど似ている商品ばかり。飛びぬけた付加価値を構築しずらくなった現代では消費者に与えるインパクトが大きくなく、結果飛ぶように売れる現象が発生しずらくなっています。

2.商品の品質の改善
品質を良くするために改良を重ねた結果、現代の商品の品質はかなり高いレベルに至っています。結果、あまり頻繁にモノを買う必要がなくなっています。1度買うと長年愛用できてしまう品質にあるのです。消費財などでも”長持ち”などのキーワードはよく耳にすると思いますが、結果購入回数が減っていることも事実なのです。

3.情報のスピード高速化
インターネット、SNSの定着によって、現代では消費者が収集できる情報量が急増しトレンドを肌で感じる世の中になっています。そのトレンド・流行は毎日のように移り変わります。かつての人気商品があっという間に廃れる現象も珍しくなくなりました。消費者は次から次へと新しいトレンドへと移行していきます。そのサイクルはますます加速するばかりです。モノが売れないのではなく、ひとつのモノを変わらずに売り続けるのが難しくなっているといえるでしょう。

なぜ製造小売業に戦略広報・PRが必要なのか?

なぜ製造小売業に戦略広報が必要なのか、その理由をまとめました。

1.認知の重要性

商品の認知度は製造小売・DtoC事業をするうえでは避けられない課題です。商品名やブランド名をより多くの人に知ってもらいたい、それは売上にも直結する重要なファクターです。
しかし課題の本質は認知数だけではないと考えます。”認知の質”も重要なのです。
例えば、テレビCM。確かに多くの人に知ってもらう機会になりますが、しかし広告の信頼性が高くない現代においては消費者にとって無関心認知になるケースが多いです。
では広告ではなく、自分の好きな専門誌で紹介されていたらどうでしょう。
認知数はCMと比較すると格段に少ないかもしれませんが、自分が信頼性を高く感じている専門誌で広告枠ではないスペースで紹介されているとなると、それは関心ある認知になるでしょう。

【メディアの広告枠で知ってもらう=質の低い認知になる傾向】
【メディアの取材枠で知ってもらう=質の高い認知になる傾向】

もちろん認知の数も重要ですが、それだけでは最終購買には繋がりません。
質の高い認知を獲得していくためには、広告枠では買えない取材枠を獲得していく必要があります。
それを実現させる活動がメディアPRです。
商品・ブランドが見せるビジョン、社会貢献度、エコ、など社会優位性をメディアに対しアプローチします。そうすることで広告枠ではない質の高い認知となる取材枠が得られるのです。
初めは小さなメディアへの出演だったとしても、その積み重ねがビックウェーブを呼ぶパーツとなるのです。広告ではない質の高い認知を獲得する為の活動を。取材が来る日をじっと待ってるのではなく、取材を獲得しにいくメディアPRも小売業界にとっては重要な活動の1つです。

2.広告パワーの衰退

製造小売・DtoC事業は絶対的な広告主義の考え方が台頭していました。
しかしインターネット・SNSの広がりによって、消費者のネットリテラシーが高くなったことで広告を嫌う風習も広がってきています。
特にZ世代と呼ばれる世代においてはネット広告をネガティブに感じる割合が約70%に上るというデータもでています。広告のチカラは未だ健在であるが、少し陰りを見せてきていることもまぎれもない事実なのです。
その要因は消費者の購買行動モデルが変わっていることにも大きく起因します。
AISASは、2004年大手広告代理店の電通によって提唱された比較的新しい購買行動モデルです。

A:Attention(注意・注目)→初めてのタッチポイント。広告で知るなど。
I:Interest(興味・関心)→興味を持ち、関心を得る。
S:Search(検索)→この商品、ブランドのことを調べる。
A:Action(行動)→購入する。
S:Share(共有)→SNSなどでレビューしたり、発信する。

そして現在、小売業で広告よりもPRに力を注ぐ企業が多い理由はこの行動パターンに大きく影響すると考えます。日本で昔からよく参考にされている消費者行動モデルケースAIDMAとは異なる点が多く、
特にInterest、Searchの部分をPRで補填するケースが多いと考えられます。

Interest→以前は機能、価格などの付加価値を直接的に訴求するケースが多かったが、現在ではその先のビジョンを訴求し、消費者に関心を与えるケースも増えてきています。
例:前・虫歯菌がなくなる歯ブラシ。 今:綺麗な歯できらめく笑顔に。

Search→AIDMAには存在しなかった要素。現在は情報過多の時代で、消費者が知りたい情報を自ら検索できます。関心を持った商品・ブランドがあると何かしらで情報収集を行います。その情報収集の結果を以て購入アクションで移動します。
戦略PRは愛してもらう為、ファンになってもらう為の行動・実行です。
その行動の軌跡が消費者に関心を与え、その行動の軌跡を消費者が知ることで好意を持つ。

広告はあくまでもAttentionを成し遂げる為のツールでありその後の役割はPRが担っていると考えます。

3.LTVの重要性

LTVとはLife Time Valueの略で「顧客生涯価値」を意味し、1人の顧客がサービス利用開始~終了までの間に企業・ブランドにもたらす価値(総合計金額)のことを指します。
上記までに述べた理由より新規顧客の獲得が困難になってきており、一度獲得した顧客をできるだけ長く維持することが最重要課題となってきています。
既存顧客とのエンゲージメントを高め、購入頻度や購入単価を高める施策が求められています。
この施策こそが戦略PRだと考えています。
LTVは広告では成し得ない指標で、より愛してもらうことでLTV指標は高まっていくのです。

目標の設定(KPI,KGI)

目標を売上に直結させたい気持ちは理解できますが、広報活動を売上数字に直接結びつけることは危険です。商品価値を高める活動である広報は売上と直接紐づかないからです。
ここを間違えて広報活動を辞めてしまう事業者もたくさんありますが、やめた途端に価値の向上は見込めません。数年先を見据えてジワジワと効いてくることを待ちましょう。
しかし折角の活動を数値化できず、活動自体に疑問を抱くケースもよく見受けられます。活動担当者のモチベーションにも結び付く為、定量的な数値をKPIを置くことをおススメします。

この際、前述したように売上数値をKPIとすることは辞めましょう。売上に間接的に貢献しているであろう数値をKPIとしましょう。
例えばWEB分析ツールを用いたブランドの指名検索数をKPIに設定するなど。
※様々な広報活動の結果、消費者ニーズが顕在化したときに商品名・ブランド名指名で行動してもらえる。結果、売上(CV)確立が高くなる、という仮説です。「〇〇といえば、XX」と想起させたことにも結び付きます。

製造小売業の戦略広報・PRで気を付けなければいけないこと

製造小売業界はすぐ結果に結びつく世界でビジネスをしています。
○○という施策をしたら今日売上が●●円高くなった、というようなスピード感ある日常を送ってらっしゃいます。
それとは逆に戦略広報は数年かけてジックリと、その商品価値・ブランド価値を高めていく仕事です。
もちろんすぐに売上に繋がる訳ではありません。このマーケティングと異なるスピード感に注意しなければなりません。中長期的なスパンで物事を見て、細かいKPIを随時設定し、小さな達成感をチームで感じることが重要です。

製造小売業の戦略広報チームの在り方

製造小売業界にはたくさんの職種の人が在籍しているケースが多いです。
私が約6年間在籍していた服飾製造小売会社を例に挙げても、デザイナー・MD・パタンナー・店舗営業・販売・生産、の6職種がありました。
当社の戦略広報支援では間接部門、直接部門の方々を巻き込みチームを組成します。そうすることで断片的一方的な情報に支配されず、包括的に情報を巻き取れます。
それは広報活動を正しい在り方へ導く第一歩だと考えています。
またこの包括的な広報組織があることで商品ブランディングや商品開発にも活かせるようになります。
愛してもらう活動を通じて愛されるポイントを知り、愛される商品作りへと活かす。
このサイクルを生み出せることが、製造小売業界で戦略広報に取り組む最大のメリットだと考えています。

最後に

製造小売の戦略広報のススメはいかがでしたか?
業界ごと、会社ごと、事業ごとに戦略広報のあるべきカタチは変わっていきます。
製造小売業界も変わっていかなければなりません。
広告だけに頼らない、戦略広報の活動も新たに取り入れてみてはいかがでしょうか。

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